ネイティブ企画

ネイティブ企画について

2002年に津田英三が企画・制作・演出を全てひとりで背負う形で立ち上げたもの。
30年間新劇の劇団に在籍したものの、晩年は、「今回は作品が・・・」「今回は配役が・・・」「今回は演出が・・・」と必ずどこか納得出来ないことが起こり、なじみのお客様からその点を指摘されても「言い訳」が出てしまう自分がいて・・・。 この問題をどう解決したらよいか・・・。
そこで出た答えが、「そうだ!自分がやりたい作品を、自分がやりたいメンバーで、自分が出来る日程と予算でやればいいんだ!」というとてもシンプルなものでした。
これなら「言い訳」は出来ないし、する必要もない。

とは言うものの、いざ始めてみたら大変・・・でした。
まず稽古場がない。 当然ながら人がいない。お金も・・・。稽古場は区の施設を使う為、抽選が大変。当たっても1回が4時間。しかも、毎回完全撤収の為、衣裳・小道具も置いておけない。
また、制作と演出を兼ねる為、稽古場取り、上演権、チラシ、パンフの制作から、全スタッフとの打ち合わせ等々・・・。 よく考えれば、数十人の人でやっていたことをひとりでやるのだから、大変なのは当たり前・・・。 それでもその「シンプルな答」を実現する為には当然のこと・・・と。

この企画を思い当たらせてくれた、もうひとつの要因はアマチュア演劇との出会いでした。
アマチュアといっても、その歴史・技術・集団の大小でピンからキリまで色々ありますが、何といっても素晴らしいのはお客様との関係。
特に地方の自立劇団は、正に「その街の文化」としてしっかり根をおろしている。
「来年はいつなの?!毎年楽しみにしているんだからね!」と、目に涙を浮かべて出演者達の手を握り帰ってゆくお客様の姿は感動そのもの・・・。 技術的には間違いなく上であろう私たちプロの舞台で、こんなお客様の姿を目にすることがめったにないのはなぜ・・・?
「文化」とは一体何・・・? と考えさせられたことです。

そこで気づかされるのは「感動と感心の違い」でした。
例えば、甲子園の高校野球とプロ野球。 「感心」させられる技術は間違いなくプロの方が上なのに、「感動」を与えてくれるのは圧倒的に甲子園。 そこにある違いは「一期一会」。それを求める為に払うリスクの覚悟!この覚悟と熱さがなくなっているのではないか・・・。
それを追い続けてみようと立ち上げたのが「ネイティブ企画」でした。

とは言うものの、技術がなくていいはずもなく、理想としてあるのは「感心」と「感動」がひとつになれる世界! 技術を持った人たちが甲子園でプレーするような姿、それを追い求めています。
また「ネイティブ」というネーミングは、ある時、ネイティブ・アメリカンの歴史と世界を知ったことからでした。
「文明が遅れているところは文化も遅れている」という文明先進国の錯覚と思いあがり。
ネイティブアメリカンだけでなく、アボリジニ、イヌイット、アイヌ、といった先住民族と言われる人達の生き方、それは皆、地球・自然に対して優しく、そして畏敬の念を抱いている。多くの物を欲しがらず、それでいてとても大切なものをひとつ持っている。
かつてアイヌの人たちがこんなことを言っていた。
「我々は自然からは利息しか貰わない。そうすれば次の年、自然は必ず利息をくれる。元金に手を付けたら、元も子もなくなるのは当然なのに、なぜ経済大国と言われる日本は、それがわからないのだろう」と。
文明的には遅れているといわれている人たちの方が、はるかに質の高い文化的な生活を営んでいる。
このことが「ネイティブ企画」のネーミング由来です。

かつて作家 井上ひさし氏が「会議も買物も、何でも画面上で出来る世の中で、決められた日の決められた時間に、決められた場所へ行かなければ感じることの出来ない演劇は、最後に残されたアナログの文化でしょう!」と言っていた。
この「手創り」も含めたアナログ性と先住民族の方々のネイティブな生き方。 決して関係ないものとは思えないのです。
それでも今回、初めて「沢山の人に知ってもらう機会はあった方がいいよ!」との助言を受け、このホームページなるものを作ってもらいましたが、私自身は、パソコンというものに触ったことがなく、ホームページなるものが何なのかも知らないのですが・・・。

 

ネイティブ企画 津田英三

 

 

 

 
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